ガレコレ [Garage Collection]
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伝とは

 山本角義氏は、武田惣角氏の死の直前まで、合気の口伝を授かったと言われています。奥伝(秘伝)は、何故口伝なのでしょうか。3つの推測が立ちます。

(1) 陰の奥義の形成により、他流との差別化を図り、神秘性を高め、優位性を保つため。

(2) 発展的要素であり、将来のため、あえて記録に残さない。

(3) 物理面より精神面の要素が大きく、記述伝達が困難であるため。

※ 消極的理由ですが、師が動けなくなる時期と重なるということもあるでしょう。

 一般的に伝承者の条件には、師が気に入っている者・修練し続けられる者・伝えたことが分かる者・伝えていける者・活かすことができる者・発展させていける者・信念のある者・人の見る目のある者・口の堅い者などが挙げられるでしょう。

 伝の根源とは、先生はどうしていたか・先生ならどうしただろうと、思い巡ることだと思ってます。真剣に取り組んでいても、その場で脳裏に焼き付くことは、そんなに多くありませんでした。思い巡りの繰り返しが、脳内に別の人格を形成するのでしょう。夢や脳裏に浮かぶ姿形は、先生本人であったり、仙人やマンガの主人公であったりします。不思議なことに、見たい部分が見え、知りたいことを囁いてくれ、それがあながち外れていないのは、霊魂との接触とも錯覚できるものです。

 ビデオが普及した現代では、物理面はある程度真似できるはずです。道場で稽古すれば、真似るから学ぶに移行するでしょう。しかし、的確なアドバイスがなければ、特に精神面の成長は難しいものです。

 近年の合気道の演武を見る限り、先祖返りで基本に忠実と言えば聞こえはいいですが、型の跡撫ぜで、上級者と言えども気が伝わってこないものが多く、合気道の尻すぼみ感が漂っています。秘密にする必要がないことまでも、誤解による暗黙の了解で、隠すべきとする心が働いた悪影響ではないでしょうか。これでは、合気道の発展は望めません。

 流派を超えて、共通なことが多くあります。手刀もその一つですが、流派が存在しているにもかかわらず、同門内でも手刀がばらばらです。手刀が大切と言っておきながら、議論することすらタブーにして、結果好き勝手にやっているように思えます。自分が若かりし頃、間違いだらけで失礼続きでしたが、手刀をつまみによく酒盛りしたものです。案外、そのような場から知り得たことが多くありました。

 本当に知りたければ、図々しさも必要だったと思います。「そうゆうやり方もある」という言葉を引き出せば、これでもいいんだと勘違いせず、別なる道を模索するきっかけにします。

 『伝とは、道と歩き方の伝達である』と考えています。道が見えなければ勝手に歩き、道が細ければ不安が高まり、足を踏み外し、先に進めなかったりします。無茶苦茶な歩き方では、思ったように進まず、怪我したりします。つまり、道を整備し、怪我を治しながらも、歩き方を模索して進むことが、伝だと思います。

 『疑問には答えを』というのは、場当たり的な問答に陥りやすく、静止した答えがあとで意味を成さなくなるだけでなく、足かせになることもあります。『疑問には道と歩き方を』と言いたいところです。近年の学校教育は、解法を覚えさせるだけで、似て非なるものに思えます。日本の教育を再生するキーワードと成りうるものです。

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