
■合気道
合気道の技名にあるように、初心者には関節技から教えるのが一般的です。ただし、関節を痛めつけて相手を倒すことは、合気道の柔術部分であり、物理的要素です。
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一教押し倒し(腕抑え)
二教小手回し
三教小手捻り
四教手首抑え
五教手首極め
六教肘固め
小手返し
四方投げ(腕絡み)
※一教とはレッスン1のことと言えば、分かりやすいかな。
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相手を倒すには、殴る・蹴る・体当たり・組む・投げる・極める・傷つける等が考えられます。現代スポーツでは、ルール内で戦わせることで、安全性を担保したり、特定の技術を向上させたり、面白くしたりしています。
ボクサー相手に拳で挑むのは、無謀です。お相撲さんに体当たりしても、弾かれるだけです。戦いでは、力自慢の人は力を、機敏に動ける人は速さを活かせば良いのです。
ただ、自分より強くて速い人は五万とおり、誰しも老い、病気や怪我に見舞われます。そのような場合でも、最善を尽くせる要素が、合気道にはあります。
「騙しが無ければ、合気道ではない」と師範が何度もおっしゃられています。相手を物理的に崩すことに加えて、相手に「何か分からないけれど崩された」と感じさせることが、騙しの一種です。
騙しは、手順によって発生しますが、機械的に行なっても上手く行きません。相手がどう感じているかを感じ取ることが、大切です。
「お互いを微重力空間にいざなう」と教えています。重力が狂ったような共有空間を作り出します。相手を浮かせるだけでは不十分で、自分も浮かせることにより、相手の浮きに相乗効果を与えます。浮きは、つまずきの動作を模したベクトル要素もありますが、位置の認識差により生じます。
相手を押さえ付けるのでも、引っ張って投げるのでもありません。その場所へ吸い込ませるように、押さえたり、投げたりします。
初動において相手を軽くしたければ自分も軽くして、トドメにおいて相手を重くしたければ自分も重くします。
合気道の技は「天に浮かせて、地に吸わせる」この天地で構成されています。
『呼吸投げ』は、この2つを限りなく同時に行なっており、高等技術ではありますが、初心者が合気道を学び始めるのに、最も適した技と考えています。
故師範の書物から色々引用したいところですが、ご本人に許可を得ることも今となっては叶わず、それら書物は門下生(主に大学合気道部員)のみに示されたものなので、ここでの引用は不適切と判断して控えます。
ただ、師範から伝えて頂いたことが、今の自分の基盤となっていますので、師範との会話を幾つか紹介しながら、自分自身の表現で綴っていきたいと思います。
師範は、色々な言い方がありましたが「合気道の稽古は、反復練習でなければならない」とおっしゃられた一方で、「何百万回やっても同じ」とよく苦笑されていました。
学生が稽古しようとした合気道は、基準となる型でした。師範が伝えたかったのは『合気法』であり、それを実現するための『体捌き』でした。
「大学の道場では、技をやらずに、流し(入身転体)だけ稽古してこい」「先輩と後輩一対一で教えるのではなく、円陣で稽古しろ」「二段掛けで稽古しろ」と言われて、すべてをそうする訳にもいきませんでしたが、練習にかなりの時間を組み込みました。このことは、自分たちが幹部を務めさせてもらったとき、大学合気道部に対する最大の貢献であったと、今でも思っています。
ボクサーであるモハメド・アリの格闘スタイルは、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」(原文は ”Float like a butterfly, sting like a bee.”)と表現されます。実際に、試合でトレーナーと共に叫んでいたと言われています。合気道に通ずるところがあります。
自分は、型を教えると同時に、イメージも喋ります。例えば、『浮身』という移動技術を『柳』というイメージと共に教えます。一番弟子は『柳』が苦手なので、その先の極意と考えて誰にも伝えてませんが、合気道の構えは「空中に浮いているトンボ」というイメージです。まあ、チンプンカンプンでしょう。
先人達は「柔術は教えるけど、合気は教えないよ」とおっしゃられています。自分は合気を複数のイメージで伝えていますが、最後はお互いが感じる稽古でなければ、意味がありません。
反復練習は、体に染み込ませる意味もありますが、間違ったことをいくら繰り返しても、無意味です。型を重視するあまり、気づきに至らないことが多いと考えてます。少しずつ変化を試して、気づきを促すことが先です。反復練習は、試行錯誤でなければなりません。まさに、師範は、学生が試行錯誤しているか、観察されていました。自分の一番弟子には、合気道は十分に伝わっていませんが、この感性だけは確実に伝わっています。
単なる言葉の綾かもしれませんが、反復練習では「何を稽古するかより、どう稽古するか」が大切です。
by Network Communication Note