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浜田翠苑『心のもよう』展

【会期】2010年7月24日~8月6日
【会場】高田屋

「書いていると心が和む。
そして膨らんでくる。
私が私から解放されるようだ。
 (中略)

自分が書いたものなのに、
 予想もしなかった線が生まれたり、
 絵でも字でもない妙な模様が現れたりして、
 自分で自分に驚く。

 これに私は『心模様』などと名づけて面白がっている。
 (中略)

 いつも気にかけていることは、
 自分の身体や心の声を聞き分けて、
 自分に優しくしてやることだ。」  浜田翠苑
『心のもよう』あとがきから

 今も『一日一書』を自らのノルマとして漢書の習作を続けている浜田翠苑さん。

 時には、身近な紙片に心を映して、遊びの書を楽しんでいます。

 今年の7月に発行された『心のもよう』は、浜田さんの6冊目の本です。

 自らを楽しませることが創造の源だとして、常に創作活動を続けている浜田さんのまさに『心のもよう』を描き出した作品集です。浜田さんの楽しい心が伝わってくる明るく、伸びやかな作品たちは、私達を元気にしてくれます。
 


「夢とか 虹とか
 ひろがりのある言葉が
 すきで
 よく書く」 浜田 翠苑

 空気中の水滴がプリズムとなって光が分散されてできる七色帯。これは、現代人が見ている虹です。

 古代中国では、甲骨文に「北より出でて、河に水を飲めり」とあるので、雲雨の変に乗じて、時としてその姿を現すのが虹だと考えられていたようです。

 自然に対する畏敬の念から生まれた『虹』は、双頭の龍、すなわち両方に頭のある竜の形だと言われています。


『恵愛』 めぐみ愛すること
「金文の『愛』という字が
 好きで
 いっぱい書いた
 その中の一つ」 浜田翠苑

 金文(きんぶん)とは、青銅器の表面に鋳込まれた、あるいは刻まれた文字のことです。(『金』はこの場合青銅の意味)。中国の殷・周のものが有名。年代的には、中国最古の漢字・甲骨文の後にあたる。

 金文の『愛』は、立ち去ろうとして、後ろに心がひかれる人の姿が文字になったもので、その心情を『愛』といいます。


壷中日月
 物の形をかたどった象形文字には、誰もが分かる、楽しい形が沢山あります。

 『壷中日月』とは、中国の史書『後漢書』にある『壷中日月長』の言葉で、「壷の中の別天地(仙境)で、時間に追われることなく、悠々と人生を送る。」という意味です。

 文字を囲む四角い枠は『亞(亜・あ)』の字で、四隅の角をおとした玄室(棺を納める室)の形をあらわしています。

 玄室を亞字形に作るのは、殷王朝の時代に始まったといわれ、玄室のことを亞、また、玄室で喪葬の儀礼を行う職能者のことも指しています。

 太い線の象形文字は剛健で、黒塗り桟の舞良戸(まいらど)に、とてもよく似合っています。
 


夢幻
「過去を振り返ることは
 過去へのさすらいであり
 夢の時である

 弟を亡くした時の気持ちで
 何枚か書いた中の一つ」 浜田翠苑

 不思議な気力が満ち溢れ、私たちをじっと見つめているような大きな目。

 デフォルメされた点や線。

 涙のようにも見える、墨のしずくは、画面から溢れ出し、浜田さんの心を表しているようです。
 


 薄墨で書かれた浜田翠苑さんの『省』は、なんだか不思議な生き物がすーっと立っている様な感じです。

 『省』は『目』と『少』とでできた漢字です。

 現在、使われている『目』は、顔に横長についていた目が縦長の字形になった物で、甲骨文や金文では、しばしば、瞳のある目の形で描かれます。

 目の上の角のように見える部分は『少』の字形で、『少』は呪力を増すために眉に付けた飾りだと言われています。

 外地に赴く時、眉飾りを加えてその呪力を示し、外に対して示される呪力が、本来はその内部にある能力の現れであることから、省心、省悟の意味『かえりみる』になりました。
 


宿屋杉
「旅人が一夜をしのいだという
 『宿屋杉』がある
 そのホコラに寝ころんで
 月を眺めた気分で書いた」 浜田翠苑

 奈半利町を起点とする野根山街道に、樹齢千年の大きな杉の株があります。

 室戸台風で倒壊した根幹は、中が空洞になっていて広さは四畳半程もあったそうです。
 

 昔、そのホコラに旅人が泊まったことから「宿屋杉」と呼ばれています。


ト旬牛骨(ぼくじゅんぎゅうこつ)
 中国河南省の廃墟から多数発見された亀甲や牛骨に刻まれた文字は甲骨文字とよばれ、現存する漢字の最古の形です。

 刀で刻まれた文字は、線が直線的で細く、単調なものと思われがちですが、シャープで勢いのある強い線も多く見られ、その数が、未釈字を含めると、四千字を超えると言われています。
 

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