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都築房子展

 2009年9月13日から27日まで藤村製絲株式会社で開催されている都築房子さんの大規模な個展では、過去から現在、そして未来に向けての時空を越えた、生命の連鎖を想像させる力強い作品がご覧いただけます。

 今回の展覧会は『なはり浦の会』が近代化産業遺産に指定されている藤村製絲株式会社を、人と人を繋ぐ場所とし、地域の芸術発進の場として活用したいとの思いを、都築房子さんに伝えた事から始まりました。

 1世紀近い歴史を持つ製糸工場に置かれた都築房子さんの作品は、作家が生きた時代と重なり、見る者に近代日本の歩んできた様々な道のりを思い起こさせてくれます。
 

昭和初期に建てられたメイン会場となる倉庫

開展式
 9月13日10時から製糸工場繭乾燥場で『開展式』が開かれました。
 ご来賓の方々の御祝辞のあと、挨拶をする都築房子。
 

※作品の解説は、キャプションから引用しました。
 

『種子』2009年
 本展のために新たに制作した作品で、ここに種をまくイメージで制作した。

 過去に制作した「プテラノドン」と同じ空間にあることで、さらに拡がりのあるイメージを感じて欲しい。
 


『プテラノドン』1995年
 高知県立美術館の『クールの時代展』に出品した作品の一部である。当時、このプテラノドンが9個展示された。

 今回は『種子』と一緒に展示されることで、過去から未来への意識の流れを感じられるのではないかと思います。
 


『4つの物語』2003年
 これはnBOXのオープニング企画「アーティストブック展」にあわせて制作した本の内容です。

 この本により、これまでの作品を振り返り整理することができました。

(nBOXは、南国市にある築100年の倉庫を改装したギャラリー)
 


『浄化』2003年
 魂の救済をテーマに制作した。

 最初はオーストラリアで、その後オランダで発表した。

 その時のタイトルは『魂の旅立ち』とされている。

※この展示室は繭を80度の乾いた熱風で乾燥させ、中の蛹(さなぎ)を殺して、繭の長期保存ができるようにする部屋です。
 


『欲望』1997~1998年
 当時、閉塞状態の中で様々な人々の欲望が渦巻く様子を見ながら苦しい思いを抱えて制作し続け、生み出されたものです。

 全体で25体を制作し、今回は15体が展示されています。
 


『記憶のかたちⅡ』2007年
 和紙による植物のイメージの作品で癒しの再生を目指し制作した。

※この展示室は、繭糸をより合わせ、一本の生糸にして巻き取る機械が並んでいる繰糸(そうし)場です。
 


『記憶のかたちⅢ』2003年
 この作品は『浄化』とつながるもので、魂をむかえる装置のような作品です。

 植物のイメージとも重なります。

※この展示室は「揚返し(あげかえし)」をする場所で、小枠に巻き取られた生糸を、大きな枠に巻き直す所です。
 


昭和初期に建てられた平屋建ての繭蔵


『生命としての体』2005年
 人間が食物としている動物も同じ生命があり、共に生きることを意識することで生まれた作品です。

 同じ場所を共に生きることを慈しむ気持ちで制作した。

※蔵の中は3部屋に分かれ、鼠と、雨水が入らないように一面トタン貼りに仕上げてあります。
 


『封印されるもの』1988年
 世紀末に向けて時代が進んでいく緊張感の中で制作された作品。

 「今になってみれば、一体何から何を守ろうとしていたのだろう」と不思議な気がします。

※製糸工場の天敵である鼠たちが、まだ繭の匂いの残る部屋のなかに置かれた光に向かって進む。
 


『記憶のかたちⅠ』1994年、2005年
 和紙による植物のイメージで制作。

 力強く生きる力を表現したいと思って制作した。

 1995年、高知県立美術館で発表し、時を経て再制作し、県内外の様々なところで展示している。
 


都築さんの小作品「記憶のかたち」を手に記念撮影
 1000人目のお客様は、室戸市にお住まいの野町さん。

 小学生の3人の息子さんと一緒に来館されました。

 突然のプレゼントに驚かれたようですが、1000人目とお伝えすると、大喜び。

 ゆっくりと会場を回られたあと、感想をお聞きすると、子どもさん達は「あばら骨みたいのが、面白かった。」と笑顔で答えてくださいました。

 皆さんが、暗い展示室のなかで、かつて生きていた物たちのざわめきを感じ取ってくれたのでしょう。

 ほんとうに、ありがとうございました。
 

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