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奈半利の歴史
魚梁瀬森林鉄道

旧魚梁瀬森林鉄道路線系統図


重要文化財指定 『旧魚梁瀬森林鉄道施設』
 旧魚梁瀬森林鉄道施設は、2009年に林業技術史上、重要な遺産としてトンネルや橋などの施設が重要文化財に指定されました。森林鉄道としては初めてです。

 魚梁瀬森林鉄道は、日本で最初に造られた森林鉄道施設の一つで、高知県東部を南北に流れる奈半利川と安田川にほぼ平行して建設されました。

 奈半利川線はその名のとおり奈半利貯木場から奈半利川に沿って北上し、安田川線は田野貯木場から安田川を遡って釈迦ヶ生で奈半利川線と合流します。

魚梁瀬森林鉄道とは、この両線を合わせた呼び名で、『日本三大美林』の一つ、魚梁瀬杉を運搬することを目的として、農商務省の直轄事業として建設されました。

直径1m、樹高約40m、推定樹齢300年の魚梁瀬杉(S29)

 戦時中の木材需要をうけて、魚梁瀬、さらに奥に続く千本山にあった樹齢数百年の巨木が次々と伐りだされました。

 大正半ばまでは18000ヘクタールあった巨木の森が、平成4年には僅か1割に減っています。

 その残った1割の巨杉が、千本山の魚梁瀬美林です。
 

軌道運搬の開始
 森林鉄道の発祥は、青森県の津軽森林鉄道で、明治39年の着工でした。

 高知大林区署は、津軽で使用していた貨車を借用し、明治40年に安田川山林道に布設しました。

 軌道上を木材を積んだトロッコが走ったのは、この安田川山林道が日本初と記録されています。

 山の勾配を利用して下るトロッコは、スピード調整が難しく、上りの空車の引き上げ作業も大変でした。
 

【犬が大活躍】下りは木材と一緒に荷台に乗り、上りは2頭の犬が空のトロッコを引き上げました。(T5)

 明治44年に安田川沿いの田野~馬路間の工事が完成し、大正4年には馬路~魚梁瀬間、また同6年に魚梁瀬~石仙間が造られました。
 

鉄道の運行
 大正8年に待望の蒸気機関車が、田野~石仙間の幹線でスタートしました。

 多くの木材を輸送するために貨車を連結し、最初は米国製の蒸気機関車が使われています。
 

奈半利川橋を走る蒸気機関車(S24)

 昭和7年に奈半利川沿いの田野~二股間、翌年に立岡~奈半利間が敷設されました。

そ して昭和17年に最後となる二股~釈迦ヶ生間が完成しました。

 昭和17年に全通した奈半利川線は、魚梁瀬森林鉄道としては新しく、線路条件の厳しい安田川線を補う目的で造られました。
 

人を運ぶ交通機関
 森林鉄道は木材の搬出専用として造られましたが、同時に木材の生産現場と地元を結ぶ唯一の交通機関として多くの人に利用されました。

 生産量が多くなるにしたがって、人の往来も頻繁になり、生活物資だけでなくあらゆる文化を山奥まで運びました。

 しかし、「運行中 萬一如何なる災害が生じても 補償致しません」の乗車心得が、構内の駅名標に書かれたように、安全保障のない乗り物でした。
 

【迎えの臨時列車】土曜日の放課後、山から臨時列車が来る。日曜日を親と過ごし月曜の朝、合宿所に戻る子ども達。(S25)

 建設後は、高知県東部の木材を運ぶ主要機関として利用されましたが、他の陸上交通が整備されたことや、奈半利川上流にダムが建設され、軌道が水没したことなどから、昭和38年に全線が廃止されました。
 

石造アーチ橋

法恩寺跨線橋(ほうおんじこせんきょう)
 建設年/昭和8年頃

 奈半利町にある石積みの跨線橋で、奈半利川を渡ってきた軌道が奈半利貯木場に入る手前で、丘の上にある寺の参道を横切るために設置されました。

 巾2.85m、長さ約 9mで急な石段がついています。
 

奈半利の貯木場
 昭和6年、奈半利の貯木場は、名所六本松の海岸を整地して造られました。

 施工して間もない頃は、防波堤も積み出し桟橋もなく、木材の船積み作業は多くの時間と人手が必要でした。
 

名所六本松海岸をゆくお遍路さん(S4)

 昭和20年代は、積み出し桟橋が整備されて、最も活気ある時代でした。

 多くの木材は、阪神地方に運ばれました。
 

船積み作業(S28)

『旧魚梁瀬森林鉄道施設指定物件』
山林技師の田中鷹太郎を中心に建設された鉄道施設は、通常とは異なる構法や規模で造られ、指定された18物件の多くが昔のままの状態で残されています。
 

二股橋(ふたまたばし)
・コンクリートニ連アーチ橋
・建設年: 昭和15年

 北川村にある無筋コンクリート造りのアーチ橋で、巾3.5m、長さ46.5mです。
 

掘ヶ生橋(ほりがをばし)
・コンクリートアーチ橋
・建設年: 昭和16年

 北川村にある鉄筋コンクリート造りの橋梁で、巾3.45m、長さ46.85mです。

※二股橋と堀ヶ生橋は、近代のコンクリート造りの橋としては最大級で、技術面でも貴重な構造物となっています。
 

オオムカエ隧道(おおむかえずいどう)
・石造隧道
・建設年: 明治44年

 安田町にある隧道で、最初に建設され物の一つです。長さ7m。

※隧道(すいどう、ずいどう): トンネルのこと
 

小島橋(こしまばし)
・鋼トラス橋・鋼ガーダー橋 
・建設年: 昭和7年

 北川村にある赤く塗られた鋼鉄造りの橋です。

 巾1.9m、長さ143mで、旧魚梁瀬森林鉄道施設の中では一番長い橋です。
 
※このページの白黒写真は、『林鉄』寺田正写真集(1991)より引用させていただきました。
 

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