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濱田典弥家住宅の特徴

 濱田家住宅は、5年前に、古い景観を壊さないよう伝統技術にそった建築様式を用いて修復されました。

 外部だけでなく、屋内も快適な住居として使えるように、かま屋、米あずかり場などは随分と手が加えられました。

 住宅は、室町時代に完成した武家住宅の書院造り様式で造られ、内部空間は接客部分、家族の生活部分、台所など使用人の生活部分などに分けられています。

 玄関入り口の格天井(ごうてんじょう)、長押(なげし)、床の間、床脇、書院、欄間(らんま)など沢山の見どころがあります。
 


家紋(丁子紋・ちょうじもん)入りの鬼瓦

 奈半利には、浜田名を持つ多くの旧家があります。

 その多くの家紋は、丁子紋で濱田典弥住宅の鬼瓦にも見られます。

 丁子は、平安時代に高貴な物として珍重され、七宝の一つにも数えられていました。そこから文様にも多く用いられ、やがて家紋へと転化していきます。

※生薬、香辛料として有名な丁香(グローブ)は、丁子の蕾を乾燥した物で、高さ数メートルもある丁子の木は、開花後、長楕円の液果をつけます。
 

懸魚(げぎょ)

 懸魚は、棟木や母屋桁の木口部分を隠すために取り付けられた装飾的彫刻で、濱田家住宅の合掌部(拝み)には瑞祥文様の鳳凰の彫刻が付いています。

 火に弱い建築物を火災から守るため、水に縁のある魚の形をした飾りを屋根に掛けて、火伏せのまじないとしたのが始まりと考えられています。

 また、妻飾りには、花模様の板を張った狐格子(木連格子)が見られます。
 

折上げ格天井(ごうてんじょう)

 一般的な格天井は、角材を45センチほどの間隔で格子形に組んで、上に板を張ったものですが、濱田家住宅では天井まわりが曲線状に曲って壁面に取り付けられている折上げ格天井が見られます。

 格天井は、寺社建築や宮殿建築に多く使われ、書院造りでは天井の造りによって格式が決まるといわれています。
 

組子(くみこ)

 組子は、鎌倉時代から現代まで受け継がれてきた木工技術で、障子や欄間などに見ることができます。

 釘を使わずに、細くひき割った木に、みぞ・穴・枘(ほぞ)加工を施し、鉋(かんな)や鋸(のこぎり)などで調整しながら一本一本組み付けていきます。

 玄関口の明り取り部分には、横の桟が一本もない筬(おさ)組子に、麻の葉柄が組みこまれています。

※麻の葉文様

 正六角形を基本とし、どこが模様の始まりで、どこが一区切りか分からないシ-ムレス幾何学文様の一つです。濱田家では正八角形の造りになっています。

 かつて、麻の葉文様は赤ちゃんの産着に、まっすぐ丈夫に育ち、そしていろんな人と繋がっていけるよ

 うにとの願いから使われました。また魔よけの模様としても考えられています。
 

床の間と床脇

 庄屋などの有力者は、代官などを自宅に迎えるために接客用の部屋を造りました。

 濱田家は、座敷の正面に床の間を設け、その横に違い棚や天袋(最上部にある袋戸棚)、地袋の付く床脇があります。そして南側の縁側に張り出た付書院(障子のある出窓部分)が見られます。

 違い棚の上板の端には、筆などの丸い物が転がり落ちないように筆返しという化粧縁が付いています。
 

欄間(らんま)

 欅材で、天井と鴨居との間に取り付けられています。
 

付書院(つけしょいん)

 書院は、もともと禅僧が書を読むために室内から縁側に張り出して造られたもので、出文机(だしふづくえ)、明り書院などといわれました。

 机の背後に、明かり障子と欄間があります。

 書院窓の形は長方形、方形などが一般的ですが、濱田家では組子(桟)の造作も細かく意匠的にも美しい職人技の冴える造りの窓を見ることができます。

 障子上には、めずらしい黄色の硝子がはめ込まれています。
 

縁側板の継ぎ目


壁掛電話

 家人の生活部分の廊下には、木製の箱がついた壁掛け電話機が掛かっています。

 型からすると1896年(明治29年)製のデルビル壁掛電話機のようです。

 その頃、高知はまだ電話が開通していませんので、使用された年代は分かりませんが、この電話機はその後、共動式・自動式電話機と並行して昭和40年頃まで、約70年間も使用されていました。
 

海鼠壁(なまこかべ)と石垣

 蔵の妻面には、方形の平瓦を貼り付け、その目地に漆喰をかまぼこ形に盛り上げた海鼠壁があります。

上にある水切り瓦の横のラインを際立たせる幾何学的な文様で、土佐の美しい伝統様式です。

 また、石垣は地震の際にもずれることの少ない切り込み接ぎの一種で、亀の甲羅に見える亀甲(きっこう)積みは大きな蔵の壁面に変化をつけています。
 

左官の手技

 蔵の入り口上部にある水平の棒状部分は、社寺建築では虹梁(こうりょう)と呼ばれています。

 語源は、柱と柱の頭に虹のように架かる梁という意味です。

 社寺建築では、棟梁が鑿(のみ)で檜や欅などの木材に唐草模様を彫刻しますが、土蔵の場合は漆喰仕上げとなるため左官の鏝(こて:泥や漆喰壁などを塗る用具)仕上げとなります。

 このような仕上げは漆喰彫刻とよばれ、鏝絵(こてえ)などと並ぶ左官の手技の見せ所となっています。
 

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