2017年2月22日(水)
一瞥 #■合気道 『騙し』を使わずして、合気道を語るなかれ。
騙しにもいろいろあって、『一瞥』はかなり高等技術である。
まず、戦いにおいて、自分の目線は相手の心臓辺りを照準として、相手の全体をぼやっとみる。相手の眼をずっと見て、戦うのではない。
さて、面白いことに、不意に相手と目線が合ってしまうと、お互いに一瞬停止してしまう。これを利用してみようというのである。
本来は相手も自分も停止してしまう瞬間を、自分だけ抜け出す。相手は、動けなかったとか、動きに付いていけなかったと感じる。つまり、相手の時間を止めた空間を、自分だけが動くことと同等なのである。この術を『一瞥[いちべつ]』と呼ぶことにする。
原理は単純であるが、なかなか修得できるものでは無い。相手が違和感を感じて目線を合わせてくれることも、間合い良く真に目線が合った時に自分の停止を解くことも、結構難しい。一瞥だけを練習しようとすると、これまた滑稽な風景となり、あまり意味がない。頭の片隅に置いておいて、たまに意識して使ってみることとしよう。