ガレコレ
Garage Collection
 
2014年4月2日(水)
STAP細胞の事件について #※トドロ

 トドロは、以前は会社に属している化学(生物も含む)研究者でした。今は立場や視点は異なりますが、生涯、根っからの研究者であると思っております。

 さて、昨日、問題となっているSTAP細胞の論文について、理化学研究所の調査委員会が見解を出しましたので、一研究者からコメントしたいと思います。

 自分も「動物の体細胞が外的刺激で万能細胞になることはありえない」という常識を破るということから、注目していました。

 というのも、もう20年近く前になりますが、造礁サンゴやシャコガイに共生する渦鞭毛藻に関わる宿主因子の研究をやっていましたので、共通点があるなあと感じられたからです。渦鞭毛藻が共生すると、万能細胞ではないですが、渦鞭毛藻の鞭毛が無くなり、完全に植物化するという現象が起こります。何故、緑藻でなく、渦鞭毛藻なのかということなのです。

 この宿主因子の研究は、引き継ぎだったので、砂上の楼閣になってしまったことを、今でも悔しく思っています。研究というものは、すべてを疑って、疑い尽くした結果、真実が残るものというスタンスが必要です。大風呂敷はいりません。

 研究には、観察、想像、閃き、そして疑いの目が必要です。疑いの目と言うのは、あまりいい表現ではありませんが、今回の事件は、まさにその目がなかったことで起きたと考えています。

 さて、宿主因子の研究は、宿主の酸に耐えた渦鞭毛藻が、おそらくタウリン存在下で、糖代謝から脂質代謝に切り替えて、植物化していると仮説を立ててみたところでお終いでした。植物化すれば万能細胞に戻せる可能性があることから、STAP細胞と何かしら共通点があるように思えてなりません。

 なお、理化学研究所といえば、大学での恩師がそこの出身で、自分たちからすれば、雲の上の研究所です。雑誌のネイチャーには、やっぱり憧れがあって、宿主因子の研究では、まさにそれを目指していました。しかし、研究に盲目はつきもの。周りは成果が積み上がってきていると楽観視する中、担当者は前線で一人もがいているものです。アドバイザーのベンソンさん(カルビン・ベンソン回路でノーベル化学賞受賞)とお話しできて、「You are lucky boy!」と言われたのが、いい思い出の一つです。まあ、ラッキーではなかったですけどね。

 理化学研究所も、世間体優先で、安直な調査結果を出したなあと思います。まあ、あれだけ偽装が浮上しては、言い訳はできませんけどね。

P.S. 合気道を究めようとすればするほど、常識や今までやってきたことが嘘になります。STAP細胞も、常識を破る一つになればいいのにと願っています。
 
お問い合わせ
by Network Communication Note