ガレコレ [Garage Collection]
2022年10月17日(月)
故鍋田師範から教わったこと #■合気道
 最近になって、切っ掛けもあり、平井稔範士と鍋田師範が練習されてきた『武道の稽古』を行うべきと気付かされました。

 師範は『乱取り』という言葉は使われませんでしたが、『二段取り』『円陣』『連続返し技』で練習をしなさいと常に言われていました。以前から二人一組で行っていた『3分間掛かり稽古』や、後輩の時代に三人一組で練習した『千本稽古』も、その一環でしょう。



 師範は、目録を下記のようにまとめられました。

・初伝前
・初伝
・中伝
・上伝



 以前の大学合気道部の道場では『初伝前』の稽古であったと認識しています。片手持ち/両手持ち/正面打ち/突き/後ろ襟取り/座法/呼吸投げ/合気投げ/天地投げを一通り学び、合気道が練習できる心体を作るレベルです。

 大学合気道部の幹部になって、師範の道場に通わせてもらえるようになりました。師範の道場と大学の道場との差をまざまざと感じることになり、改めなければならないと考えました。先輩方、後輩も同様な気持ちを抱かれたことと察します。

 師範の指示通り、片手持ち・正面打ちの『流し(入身転体、入身転換)』だけを切り取った練習、『二段取り』『円陣』による練習を増やしました。

 師範に「大学合気道部で教える技の型を教えて欲しい」と言うと、毎回怒られて練習すら始まりませんでした。『型』『遠心力』という言葉は、師範の前では禁句でした。



 自分達が幹部時代に師範によく手合わせして頂いた徒手の技は、下記の通りです。技の表記方法は、習った当時のものです。

・片手持ち/正面打ち 一教表押し倒し 中間型
・片手持ち 一教裏引き倒し
・突き 一本取り
・片手持ち/正面打ち 三教小手捻り 流し
・片手持ち 五教手首極め
・突き 小手返し
・片手持ち/正面打ち 四方投げ 肩越し投げ
・片手持ち/突き (側面)入身投げ
・片手持ち 合気投げ
・片手持ち/突き 腰投げ
・片手持ち/突き 十字投げ
・突き 腕ひしぎ

 『一教表/裏』『側面入身投げ』が、技の稽古の中心でした。『後ろ襟取り』も手合わせして頂きましたが、ほとんどが『片手持ち』でした。



 のちに大学院修了までに、『初伝』『中伝』を一通り教えて頂きました。目録は「これができるように稽古しなさい」と、門徒に公開されているものであり、初伝だけでも相当な数です。初伝・中伝の技は、約束稽古ですが、本気の攻撃を対処できるレベルを求められています。



 『上伝』については、いろんな見解があります。師範の合気道を極める機会を作りたい・絶やしたくないとの思いから、上伝を公開して拡めて欲しいと言う意見も分かります。ただ、上伝を秘伝とすることで、乱立は防げます。上伝の存在は、精神面で有効に働いています。

 上伝を継いだ者は大変ですが、上伝には何が示されているのだろうと、思い描くことは楽しいものです。もし『腰回し』の妙が示されていれば知りたいとは思いますが、気づいた者への確認と捉えて、自分への課題にしています。



 『体捌き(単独動作)』に関しても意見が割れるところです。自分達が入部したての頃、師範が大学の道場に来られました。自分達新入生だけを集めて、体捌きを披露されました。パッパッパッとの動作をみて、えらい省略形であり滑稽だなぁと思いました。のちに、思想が全く異なっていることを知り、やり方を改めました。



 『型』は集大成でありながら、不確かなものです。自分の一番弟子は、自分より小柄です。なので、相手と接触する際に手刀で相手の『肘』に触れなさいと教えるも、間合いから『前腕』になってしまうのですが、彼の徒手格闘の経験が補ってくれています。彼は道場生にも、こういう理由で肘ではなく前腕に触れていると説明を加えており、自分の理論と大きくずれていますが、自分は彼の理論を認めています。

 反復練習は、同じことを繰り返すだけでは意味がありません。「何百万回やっても同じ」と苦笑される師範の姿が思い返されます。基本に戻ると言って、1+1ばかりやりますか? 同じ高さ・角度の捌きばかりで練習しては、弊害も生じます。

 大学合気道部で伝えられてきている型は、あくまでも基準であり、基本と呼べば語弊を生みます。『手順』と『効果』を研究して、独自の型や理論を育てていくことに意義があります。効果では、物理的に相手がどう崩れるかではなく、相手がどう感じているかが焦点となります。



 そして、稽古する場を『道場』と呼ぶならば、それなりの覚悟を持って行うべきと心に誓っています。当道場では、本気の闘いに、どれだけ近い稽古ができるかを大切にしています。
 
お問い合わせ


by Network Communication Note