ガレコレ [Garage Collection]
2020年5月16日(土)
[基本]歩み #■合気道
【運足とは名ばかり】

 『運足』と表現した場合、ほとんどの人は、足の位置と捉えるでしょう。

 教本では、しばしば『運足図』と称して、黒足形と白足形を線で繋げて説明します。しかし、地面に記した足形を辿ってみても、なかなか真意までは読み取れません。運足図に描かれた足形の位置は、あくまでも足跡であり、指標に過ぎません。真似るところが間違っています。自分の体全体がどうなって、相手がどう感じるかを練習して下さい。

 合気道の基本的な移動を『歩み』と、独自に呼んでいます。『歩み』が出来るか出来ないかが、当道場で合気道を続けられるか続けられないかに繋がっており、実はかなり深刻な問題と捉えています。



【心臓の移動】

 『歩み』の由来は、赤ちゃんのよちよち歩きです。みんなから「あんよは上手」と言われながら、不格好かもしれませんが、体全体を駆使して進んでいく、人間本来の歩き方です。

 大人は、赤ちゃんの頃の『歩み』を忘れて、後天的に刷り込まれた歩き方を自然なものと錯覚して、普通に歩いています。後天的な歩き方が悪いのではなく、さり気無く技を繰り出す合気道には、不向きであるということです。

 『ナンバ歩き』という日本古来からの歩き方があり、同じ手足を出す歩き方と言われています。段差を昇り降りする場合、同じ手足を出し引きした方が、明らかに自然です。余談ですが「難場」が語源という説があります。

 ナンバ歩きで注目すべきは、出した足と同じ腰骨も自然に出るということです。異なる手足を出すツイスト型では、かなり意識しないと腰骨が出ません。腰骨の出し引きが、合気道に限らず、あらゆるスポーツにも重要であると考えています。

 自分が学んだ光輪洞合気道では、『腰廻し』とか『腰廻り』という合気道用語があります。インターネットでは、ベリーダンスかと揶揄されることもあります。ここでは、腰骨の出し引きが重要であるとだけに留めておきます。

 自分は、合気道の捌きの中に自然の要素を見出すこと、その逆で自然の法則を合気道に取り入れることを続けています。赤ちゃんの歩みは、人類の二足歩行において、まさに自然そのものと感じました。

 赤ちゃんは、脚力で前進しているのではなく、重心を前に出して、脚は前に送る程度です。頭を前に出し過ぎると、前のめりに転びます。胸あたりが丁度良いのです。

 技を掛ける自分も、技を掛けられる相手に対しても、『心臓の移動』が重要なのです。

 なお、脚と腰骨を一体化するには、『心臓直下が股』とイメージすれば良いでしょう。



【コマのように動いてバランスを取る】

 絶えず動いていることが重要です。合気道の動きは、コマが回転しながら、傾いたり復元したりして、移動していく様に似ています。

 コマの回転は一方向ですが、合気道では、正回転と逆回転を複数組み合わせます。回転が切り替わる極での捌きが重要となります。

 『歩み』を往復で行うときに、極での捌きを練習します。



【摺り足の極意から解く】

 『摺り足』の極意は「濡れた半紙を破らず」とあります。

 蹴ったり、捻ったり、擦ったりすれば、半紙は破れます。摺り足だから、足裏を地から離さずに擦るのが正しいと考えがちです。力士のように強い力を出すのであれば、それでも正しいと言えるのですが、合気道では無意味な『ずり足』です。

 また、普段の歩き方は、踵の後方外側から入り、小指球を通り、親指に抜けます。俊敏に動くには、踵を浮かせて、つま先立ちでいろと言われたものです。これらの歩き方では、半紙は破れまくりです。

 地に足裏を置く感じです。足指を使わずに、足裏三点(母指球、小指球、踵点)で立ちます。地に付くときは母指球と小指球から踵点、地から離すときは踵点から母指球と小指球とします。踵点が付いたら、すぐに離します。『べた足』になってはいけません。

×ずり足
×べた足



【歩みが難しいと感じる訳】

 歩みは大した技術ではありません。公開練習の始まりに、雑談しながらジョギング代わりの準備運動として10分間行っています。

 自分は、もう30年以上、日常において『歩み』で移動しています。意識せずとも、『歩み』になっていることが理想です。

 故師範の詰め寄り方を思い返しています。枕元で、故師範や仙人が教えてくれることもあり、ある意味、自分の頭の中で整理がついています。

 公開練習では、皆さん上手なので、ついつい、あれこれ注文を付けてしまいます。奥が深いと感心してもらえる半面、動きが急に悪くなったりもします。

 『歩み』に限らず、1つの動作は、複数の要素で成り立っており、相反する要素もあります。要素同士のバランスであったり、発動していない要素は心構えだったりする訳です。この考え方が、混乱を生じさせる原因と承知しています。

 『歩み』だけ練習しても上達しません。戦いの中でどう活かされているのか気づけば、混乱も解消されるはずです。

 なお、『歩み』が十分にできずとも、合気道の練習はできます。ただ、継承者には、『歩み』を完全修得してもらいたいものです。



【練習方法】

・3歩を1組とします。右足スタートと左足スタートが交互にできます。
 一日の目安:3歩×100組×3セット=900歩

・赤ちゃんの歩みの稽古と同じく、両腕を前に出し、肩の高さに維持して、両手を浮かすようにして、軽く引っ張ってもらいます。

・鼻緒のある草履で歩きます。自分は、日常訓練と称して、年がら年中ギョサンで歩き回っています。学生の頃からビーチサンダルで、全然変わっていません。

・小さめのサッカーボールで小刻みにドリブルして、ボールをキープします。ボールを蹴り出すのではなく、ボールの端を土踏まずで踏むような感じです。足裏の付き方、膝の使い方を学びます。
 
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