ガレコレ [Garage Collection]
2020年1月22日(水)
[技]側面入身投げ #■合気道
 小兵が
 
大兵に相手に密着する光景を、相撲ではよく見かけます。小兵と言えど、常人の何倍も力があることで成せる技です。普通は、力負けします。

 柔道では、朽木倒しという技があります。相手に密着して体を浴びせることにより、相手と自分が一体となり倒れていくというものです。柔道界でも、この技の有効性に疑問の声もあります。実際の戦闘では、倒れていく間に、相手に姿勢を整えられて、倒れた瞬間に形勢逆転は十分に考えられます。

 ある意味、密着技は、捨て身ということを感じて下さい。

 レスリングは、密着技に特化したスポーツです。なので、格闘技としては、矛盾を孕んでいます。余談ですが、組技のレスリングに、打撃技を加えたのがパンクラチオンです。古代パンクラチオンは、禁じ手は目潰しと噛み付きの2つだけですから、これはこれで凄まじいものです。

 本来、合気道は、総合武術をめざしたものです。特化したものではないのですが、範疇が広いため、いろんな合気道があるという訳です。しかし、形に盲目になり、攻防一体を忘れてしまっては、もはや合気道とか武術とは言えません。

 合気道では、密着するのではなく、相手と自分の間に拳1つ分の空間をつくります。当道場では、0レンジと呼んでいます。相手は攻撃しにくく、自分は滑り動いたり、空間を潰したり戻したりします。

 合気道の重要動作に『入身』があります。言葉から誤解して、無暗に相手に近づいてはいけません。相手の嫌な盲点に、自分という駒を進めると捉えて下さい。また、入身の手順とタイミングを修得しないと、相手のカウンターをもらうだけです(影踏み、六線、柳、浮身、肘触れ、マッシュルームの軌跡など)。

 『側面入身投げ』は、文字通り、相手の側面に入身して投げる技です。しかし、密着技ではありません。もちろん、捨て身でもありません。技の手順は次の通りです。

⓪逸らし…今回説明省略。
①飛び込み
②上げ
③軸づくり
④開き


【①飛び込み】

 相手の直突きを逸らし、相手の腕を手刀が覆いかかり相手の腕を制して、相手の心臓に効かせます。この瞬間が大事なので、肘付け、山越え、腕1/4軸、おひけえなすって、上澄みを取るなど、多数の術で表現しています。

 このときに、相手の腕と自分の体の間に拳1つ空間を設けます。密着していてはいけません。


【②上げ】

 自分の手刀を上げて、相手の腕は開放されて自然と上がり、相手の体を逸らします。自分の手刀は、相手の顎を霞める程度です。

 相手の腰から下を無効として、上澄み(心臓から上)だけを反らせるので、反りは小さいものです。相手の腰が入ると反り(遊び)は大きくなり、相手はバランスを回復しやすくなります。

 このときにも入身しますが、入り過ぎていることがよく見かけられます。これでも、柔術としては成立しています。自分の脚に乗せ、相手を振り回せば済むことですが、これを練習している訳ではありません。自分も、若かりし頃は、そんな技をやっていたものです。

 相手の脹脛と自分の脛は離しておきます。相手が後ろに落ちる際に触れれば効果的ですが、触れなくても構いません。囲碁で例えれば、一間トビで相手を待ち構えているのです。


【③軸づくり】

 自分の手刀の肘辺りで、相手の脇を谷となるように押さえて、洋式扉の軸をつくります。蝶番は、緩んでいるとイメージして下さい。

 ある程度固定されていれば良いのです。押さえつけると、相手の抵抗が生じます。


【④開き】

 まず、手刀の先端を相手の顎の上にちょこんと乗っけます。相手の頭の重さや崩れにより、相手は後ろに倒れます。

 相手の鎖骨と肩と顎で作るられる空間に、手刀を伸ばし入れます。自分に近い相手の半分をいじります。相手の喉を刈ったり、相手の反対側の肩や胸を押すのは、力技です。

 手刀で、相手の体を洋式扉と見立てて、軸が確立していれば、簡単に開きます。手刀を振り回してはいけません。道に落ちてきた大岩を動かす訳ではありません。

 軸も後ろに傾けて、後ろに少しずらします。壊れた扉を開くと表現しています。


P.S.
 
自分は「難しい」と言って、やる前から根を上げる人とは関わらないことにしています。考えることおよび学びを放棄しているに過ぎません。

 まずは、教えられた手順を、手刀の動きに集中して行って下さい。手順は3~5と言ったところです。運足は、手刀に従ってついて来るだけでいいです。手順を繰り返している内に、感覚や運足やタイミングが分かってきます。

 特に、初心者は、力を入れる、力を出す、力を込めることを、一旦横において下さい。これが、当道場の『守破離』の守で求めている唯一の事項です。


P.S.1-2
 
「難しい」のも分かります。レベル1、レベル2をやらずして、レベル3から教えていることにも原因があります。下記の理由から、ある程度高いレベルから教えようと方針を変えています。

①レベル1を、基本中の基本と勘違いしてもたいたくないこと。
②レベル1には嘘があり、実際には技が掛からないこと。
③一番弟子に「最初の3年間は無駄だった」と言われたこと。
④故師範から「奥義を修得することに時間を費やしなさい」と言われたこと。

 しかし、レベル1、レベル2を省いたことで、本来身に付いていなければいけないことが出来ていません。レベル3に加えて、あれこれ言うものですから、レベル4にもレベル5にも感じてしまうことでしょう。何とかせねばなりません。


P.S.1-3
 
前回の復習をしたいと言われれば、やることにしています。しかし、単なる記憶の固定に終わり、嘘の部分も固定されることになります。新しい要素を知ってから復習することに、意義を感じています。

 忘れてもいいのです。同じ過ちを繰り返すのも分かっています。ただし、教える側は、嘘を押し付けてはいけません。嘘になってしまうのには、ちゃんとした理由があります。本質を見極めようとする力が育っていないのも理由の1つです。

 自分が大学時代、故師範の一挙一投足を見逃すまいと、体育会合気道部の幹部たちは必死でした。先生の道場に来れない部員に教えなければならないからで、「分からない」では済まされません。教えること、伝えることを前提に学ぶことや考えることは、とても有効なことです。


P.S.2
 
荒療治となりましたが、真の合気道の技を喰らっておかないと、誤りはいつまで経っても直す気にもならないと考えたからです。自分も、故師範に技を掛けられて、初めて技の軽さと重さを知ったものです。
 
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