ガレコレ [Garage Collection]
2019年12月15日(日)
波返し(化勁という言葉から思い出して) #■合気道
 『波返し』は、相手と手刀を合わせて押し引きする際に、接点を水平面で回転させる動作です。大学の合気道部で、そう呼んでいたまま、使わせてもらっています。故先生の著には『波返し』の言葉は見当たりませんでしたが、先生との会話の中であったと記憶しています。

 故先生著『三たび守破離』において、p16合気道三原則>一.相手の力を無効にする(力をそらす)>「手刀合気法」の練習、p24『手刀合気法のこと』、前作の『再び守破離』において、p30相対基本動作>相対合気法>手刀合気法として目録に示されていました。

 昨晩の稽古で、一番弟子から、化勁[かけい]という言葉が出てきました。そう言えば、先生の著にもあったなあと思い出して、久しぶりに本を開いた訳です。


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三たび守破離
 
p24
 
からそのまま引用
 
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● 手刀合気法のこと ●

 力は或る事を成すため、一方向に向かって加えられる。そこでその方向を逸らし変えてしまえばその力は無効になりその事は成せなくなる。

 手刀合気法は相手が押す、引く、打つ、の力を腰の円転の力で逸らす練習である。

 合気道の練習の第一とし昔の初心者はこれに大半の練習時間を使った。ただ、「腰廻し」だ「手刀法」だ、とだけの説明できらわれる練習であった。しかし「中国拳法」でも「化勁」(一五〇グラムの力で六〇〇グラムの力を逸らす法)として大事な練習の一つとされており鉄心会に伝えられているこの手刀合気法はこの拳法の「太極拳推手」というものとまったく同じである。

 腕の筋肉が痛くなるようでは練習方法に違いがある。体全体、腰の円転でやり、手の屈伸の力は使わない。
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 先生の言われる通り、この一番弟子も、体捌きや波返しの練習を嫌がって、自分が他の道場生に教えている間に、一番弟子に任せた道場生には勝手に他の練習に切り替えていたり、半ば諦めていました。相手の感覚を一番に扱ってきた反動で、自分の動きに関しては無頓着になりがちです。最近、ようやく気付いたのか、転体とか波返しに興味を持って練習してくれるようになりました。

 『波返し』ですが、相手の手刀による押しを、自分の手刀で払うのではありません。それでは、1分もしない内に、腕の筋肉が痛くなります。自分は、学生時代に、右手刀で最長1時間やったことがあります。今はもう、そんなことに付き合ってくれる輩もいませんが、若い頃は千本稽古など、無茶苦茶な練習の中から何かを掴み取ろうとしたものです。

 『腰廻し(腰回し、腰廻り、腰回り)』に関して、自分は使っていますが、具体的には公開練習では教えていません。廻しという言葉の轍に嵌って、どう教えても誤った動作に導かれてしまいます。腰廻しより、まずは『心臓』の位置的移動に拘って教えています。これが十分にできてから、腰廻しという指導方針です。実際に、一番弟子(2009年4月7日に入門)には、今年2019年になってから、腰廻しについて、少しずつ理解を促すように教えています。基礎が固まるのに十年必要だったと感じていますが、当の本人からは最初の三年間は無駄でしたとよく批判されます。去年の新入生からは、ある意味、促成栽培的な教え方に切り替えており、これも有りかなと手応えを感じています。

 当道場では、「合気道は手刀と間合いの武道」と看板に掲げている通り、手刀についてかなり試行錯誤してきました。その中で、「払わず逸らす」をキーワードにしてきました。

 学生時代に、先生の道場で、正面打ち一教表押し倒しの練習の際に、手刀で「受け流す」ということを知りました。先生の存命中に、褒められる手刀の捌きをお見せ出来なかったことが、心残りです。

 相手の手刀を受けることが肝心です。受けた相手の手刀を相手に斜に押し込み、相手の手刀が滑って逸れて、その手刀を自分の手刀が追って制します。自分が、以前から「チュルン」と表現している動作です。最初から、引っ掛けようとか、巻き込もうとかすると、相手の攻撃を呼び込んでしまうか、相手の手刀が外れてしまいます。

 剣の場合は、もちろん刃を手刀で受けては駄目です。また、猛スピードにより一発で相手の懐に入ろうとすれば、斬られるのが落ちです。疑問に答えるべく、揺れ、外し、入身、柄の押さえを練習しました。剣には剣に対する手順、騙し、間合いがあります。合気道では、一動作に見えても、二動作以上の組み合わせになっており、これを基本と位置付けています。技とは、ボクシングで言えばワンツースリーとコンビネーションと同じです。
 
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