ガレコレ [Garage Collection]
2018年11月10日(土)
レ点の返し #■合気道
※文章を分けてみます。

 『手刀の反し』の一要素として『レ点の返し』の術を位置付けていました。漢文のレ点が日本人にはなじみ深いので、そう呼んでみたのですが、今では陽の筆頭奥義としています。

 「レ」の文字の姿に、次の思いを込めています。

(本質1)入射が垂直で直線的、反射が斜めで曲線的。
(本質2)入射より反射が短い。
(本質3)同じ位置には戻らない。

 「反」は逆にする、「返」は戻ってくるニュアンスなので、「返し」の方を選んでいます。

 これだけでも、十分な説明と思っているですが、個々の技で使用してみないと、絵に描いた餅と同じで、本質を理解できません。

 当道場では、突きや正面打ちに対して、相手が攻撃してきた腕の肘に先に触れ、相手の攻撃を相手の内側にずらし、これを戻して相手の心臓を浮かします。水面に浮いたような相手の心臓を制御することから『上澄みを取る』と呼んでいます。この一連の動作に『レ点の返し』を使用しています。


【吸収する手刀】

 手刀というと、指先をピンとしているイメージがありますが、朝顔の花で例えるならそれは「開き(咲き)」であって、対になる「蕾」の手刀が重要です。故先生から耳にタコができるくらい聞かされていたのですが、先生の本には「開き」の手刀の写真しか掲載されていません。また、そのタイミングでは「蕾」の手刀がふさわしいのではないかと思う場面もあり、本にまとめるための撮影は難しいと改めて感じました。

 簡単に言うと、相手に触れているときに、ギンギンに手刀に力を込めてるのは、無意味を通り越して、最悪ということです。手刀のイメージを、根本から見直してみて下さい。


【離れない手刀】

 離れない手刀を、見たり聞いたりしたことがあるでしょう。二教小手回し等で、お互いの手首が絡み合って極まっており、手を離せば済むのに離れないという例が、思い浮かびます。

 今回は、上記の術とは異なる次元で『離れない手刀』を述べてみます。

 手刀で押して引いて同じ位置に戻しては、手刀は相手にくっ付きません。それに、引いては千切れてしまうので、常に押しています。手刀を戻して、異なる絶対位置で異なる角度で異なる相対位置になっています。

 相手の肘に触れた手刀は、垂直に相手の腕を越えていきます。これを『山越え』と呼んでいます。相手の腕を、相手の心臓の表面のラインまで押し込んだら、相手の前腕半分まで撫でて戻してきます。その軌跡が、「レ」の字になっています。

●離れない要素1

 相手の腕を10押し込んだら、9戻します。相手の腕の復元力を利用するのであって、引き戻すのではありません。戻してきたとき、押しが1残っています。

●離れない要素2

 戻してきたとき、相手の腕が進みたがっている方向は、戻してきた方向や自分が触れている方向ではありません。相手の小指球の方向です。

●離れない要素3

 戻ったとき、相手の腕は『おひけえなすって』のように手の平側が天を向き、肘が若干折れ曲がってくの字になります。そうは言っても、完璧に『おひけえなすって』の姿にはなっておらず、そんな感じになっているという程度です。自分の手刀は、その上にちょこんと乗っています。


 力技で良かれと思っている内は、決して到達できない境地です。故先生は、力の無い女性の技をいつも褒められました。まあ、自分もそうでしたが、力ある人も、いずれ老いて力が出せなくなります。『レ点の返し』が分かると面白いですよ。武術の魅力は、老いた先にあります。
 
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