ガレコレ [Garage Collection]
2019年2月3日(日)
天地投げの地 #■合気道
 座して行う『合気上げ』の一つでは、片手刀を地に、もう片手刀を天にして相手を崩しますが、これを立って行った技が『天地投げ』です。合気上げがある程度出来ていれば、天地投げもすんなり出来るかと言えば、そうでもありません。立ち技では、間合い、相手の下半身の制御も加わるからです。

 天地投げに限らず、技の練習には、『入身』と『隅』の言葉の呪縛を解いてあげる必要がありそうです。

 『入身』とは、「相手の盲点に自分の心臓を進ませること」と定義を改めましました。「相手の裏に自分の体を入れること」との表現では、勘違いして、進めるはずもない位置まで闇雲に突っ込んで、相手のカウンターを喰らうのが落ちとなりかねません。当道場では、相手にとって嫌な位置を『盲点』と呼んでいます。『裏』も盲点の一つです。

 『隅』とは、相手が崩れやすい方向を意味しており、『隅落とし』という技もあります。隅を、斜めの方向とか、正三角形の頂点とか言ってしまうと、語弊が生じます。深く攻められるはずもない位置にめがけて、ぶつかりに行ってしまいます。隅に引っ張ったり押し込んだりするのではなく、折り畳むようにして隅に追い込んでいくのです。

 上記を踏まえて、天地投げの『地』の手刀について、説明します。天の手刀に関しては、今回は説明をはしょります。

 しばしば見られるのが、地の手刀に相手を完全に乗っけてしまうやり方で、練習では出来ても、実戦では出来るはずもありません。相手が乗っかるのは極まる一瞬だけです。

 まず、半ば寝ている両手刀を立てながら相手に両手刀を持たせ、相手の両肘を一旦張ります。自分の両手刀は、親指が天、四指が少し斜め上、肘は弛んで、少し前進しています。力は、相手の人差し指のライン(腕1/4軸)を伝って脇下を通り、心臓の表面に達します。両手刀で、相手の心臓を挟むようなイメージです。

 両手刀を立てたまま、両肘を軽く伸ばします。相手の体を宙に半固定したまま、相手の両肘を弛ませます。

 つまり、相手の『肘の張りと弛み』は、合気上げの初動と同じです。この初動で、相手にぶつかること無く、次の動作に移れます。

 相手の肘の弛みと同時に、地の手刀を立てたまま相手の脇下の空間を分けながら、相手の片眼の盲点に自分の心臓を進ませます(入身)。この時に、相手の重心が少しだけ後ろになれば、それに越したことはないのですが、そうならなくても後の手順でそうなります。

 天の手刀で、相手の肘と肩をしゃくり上げます。

 つまり、地の手刀、入身、天の手刀の順で行います。一度に行うと、相手に弾かれます。

 地の手刀を、さらに少しだけ進ませて、半固定します。

 地の手刀側の相手の体軸を『蝶番』にして、天の手刀を戻しながら、相手の体を『壊れた扉』とイメージして、相手を後ろに傾かせます。

 同時に、地の手刀は、動かさずとも、相手の体の開きが加わって、相手の隅の位置になります。この時点で、相手の重心が完全に後ろになっています。

 要は、初めから自分の手刀を相手の隅の位置に進めるのではなく、相手の体の動きが加わって、隅となるということです。これは、手刀を進めるはずもない位置に進ませる技法の一つで、すべての技に通じます。


P.S. 天地投げは、柔道の『大外刈り』に学ぶところが多くありました。大外刈りも、初めから相手の裏に足を踏み込めるはずもなく、相手を引きつけて崩し、その位置を確保します。


P.S.2 若かりし頃の自分も、パワーで帳尻合わせしておりました。力があるうちは、柔術として実戦でも使えるでしょう。相手の反撃を多少喰らってもという考えに基づいたやり方です。

 当道場では、短刀を振りかざす相手をどう制するかを、課題の一つにしています。まだまだ、練習の入口でさまよっていますが。。。覚悟はともかく、技の洗練無しでは殺られてしまいます。


P.S.3 無駄な動きは、隙をつくるようなものです。技や術は、相手がどう反応するか知るために、前もって構築したものです。なので、形を覚えるだけでは無意味です。当道場では、相手がどう感じているのかを味わって練習して下さい。
 
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